2021/07/20
現代の奴隷状態に置かれているアジアの女性と子どもたち ウェビナー報告
すべて |アジア宗教者平和会議(ACRP)とアジア太平洋女性信仰者ネットワーク(APWoFN)は、『現代の奴隷状態に置かれているアジアの女性と子どもたち』をテーマに、人身売買の防止を目的としたオンラインシンポジウムを6月22日~23日に実施しました。参加者はアジア太平洋地域の他に欧米、欧州などから17か国、延べ150人が参加しました。
ACRPとAPWoFNは今年1月にも『アジアにおける人身売買の現状』をテーマにシンポジウムを行い、今回はその第2弾として打ち出されたウェビナーです。(前回の報告はこちら)今回は、人身売買でも特に被害が深刻なアジアの女性と子供に焦点を当て、問題解決に向けて議論を交わしました。
2日間の会合では、登壇者はアジアの宗教者らが各国で起きている強制労働や児童婚、児童兵士、花嫁売買について現状を報告しました。インドでは、性的人な人身売買の被害が増えており、国内の経済成長が格差拡大と貧困を招き、仕事を求めた際にだまされて、強制労働や性的搾取の被害に遭うケースが増えています。また、新型コロナの感染が人々の生活に影響し、自身が人身売買の被害者、加害者になっていることも報告されました。
1日目は主に女性の被害に焦点を当てたセッションとなりました。家庭内奴隷というテーマでは、ベビーシッターや家政婦などの家庭内労働者が長時間勤務や低賃金といった過酷な労働、身体的、精神的暴力を受けることを指摘しました。住み込みを伴うことが多く、密室状態で外部とのつながりが少なく孤立しであることから被害の実態が見えにくく、被害者の発見、救出に時間が有することが問題点として挙げられました。
2日目は子どもに焦点を当てたセッションとなりました。被害にあう多くの子どもは「洗脳しやすい」「大人への忠誠心が高い」「危険という認識や感覚が養われていない」といった特徴が報告されました。我々宗教者の役割として、大人として、親として、子供が勧誘されないよう搾取構造を断ち切る必要性が指摘され、家庭教育の重要性改めて認識させられました。
人身取引の問題は、複雑に絡み合う鎖です。どこかで断ち切らない限りこの世から無くなることはありません。我々宗教者は、人の痛みに、SOSに敏感でなくてはなりません。我々は各セッションでの報告を聞いた後、人身取引の問題を根本的に解決するため、貧困層の教育機会や安全な雇用をつくるための連携を決議しました。
これから我々に求められていることは具体的なアクションに繋げていくことです。被害者のケア以外にも、被害を未然に防ぐために、人々が心から信頼し合い、声を上げて助けを求められる世界、「NO」と言える世界、「他人事にしない」世界を築いていかなくてはなりません。さらには、人身取引の被害者とソーシャルワーカー、ケアギバーの橋渡しができる存在にならないといけません。
社会的に弱い立場に置かれ、被害を受けている女性や子供の命と尊厳を守ることが急務であり、宗教者は宗教・宗派、人種、国籍を超えて多くの人と連帯し、社会全体で人身取引の防止に取り組むことが重要です。世界は全ての人がつながり合っており、私たちは苦しむ人が減るように努力しなければなりません。人身取引を誘発する企業に対する不買運動、家庭教育、さらに、市民による草の根の活動から政治の取り組みに至るまで、さまざまな国際ネットワークを生かして啓発活動に努めることが重要であると確認し合いました。