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2021/10/02

アフガニスタンの涙と希望‐平和への行動を続けて

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タリバン政権樹立後、アフガニスタンは再び混迷の時代へ向かってしまっています。そのような中でも平和を訴え活動し続けているYour Voice Organizationの仲間と、彼らを、アフガニスタンを長きに渡り支え続けてきた平和村ユナイテッドの皆さん。

今回、平和村ユナイテッド代表理事の小野山様より、アフガニスタンの現状と「アフガニスタン・ピースアクション!」の必要性、今求められている平和的行動について教えて頂きましたのでご紹介いたします。


アフガニスタンの涙と希望‐平和への行動を続け

一般社団法人平和村ユナイテッド代表理事:小野山亮

◆ 暴力の連鎖、復讐…

「復讐」と思われる惨殺事件も起こっているといいます。首都カブールも含む、アフガニスタンのほぼ全土がタリバンの支配下に入ってからすでに1か月半がたちました。これからは、戦っていたもの同士が同じ社会に暮らしていくようになるわけですが、そうした中で、復讐と思われる事例を現地から聞いています。復讐については、タリバンがそれを禁じる状況にまでなっています。
数十年にわたる戦争…戦闘、空爆、誤爆、自爆、襲撃事件などによるたくさんの死。アフガニスタンには、悲しみと、苦しみと、怒りが積み重なっています。これまで活動をおこなってきた地域には、爆発物による攻撃で父親を失い、復讐を誓う兄弟がいました。家族が殺されたのに、なぜおまえは戦わないのかと多くの人に言われたという人もいました。地域の中では、誰が自分の家族を殺害したのか分かっている、だから人は復讐する、と話す人もいました。実際に、復讐心から戦闘に向かう人も多いのです。

状況が一変した今、また新たに暴力の連鎖や復讐が積み重なろうとしているということなのでしょうか…

◆ 暴力の連鎖を断つ

暴力の連鎖を断たないといけない。長年の紛争の中で、人びとの間には、「力」への信奉、力には力でといった考え方が、蔓延してしまっています。銃や武器とともに。家庭や地域での争いが、武装勢力も含めた大きな争いにつながることもあります。「力」によって問題を解決しようとする環境や社会がある限り、「力」を使おうとする個人や主体が次々と現れます。そしてそれはまた、復讐や暴力の連鎖を引き起こします。特定の個人や集団というのではなく、社会全体が変わらないとまた同じことが繰り返されてしまうのです。
そこで、当団体は現地パートナー団体「Your Voice Organization」(YVO)とともに、広く社会の中で、力には力でなく、人びと自らが身近な争いごとの解決の事例などについて話し合い、何らかの平和のためのアクションをしていく活動を支援しています。
これは何か抽象的な考えから始まっているだけのものではありません。この活動はYVO代表のサビルラ・メムラワルさんが、かつては自身が武力を信奉し、銃をとっていたものの、米軍の軍事行動による市民の被害に抗議するNGOの活動に触れ、対話による問題解決に気づき、当事業の原型を開始したところから始まっています。「自分が変わったのだから、みな変わることができる」と彼は語ります。
彼は自身でも、米軍の軍事行動で市民の被害が出た際、砲弾片を集めて米軍に抗議するようになり、また、家族や親戚から始めた身近な争いごとの解決事例の発表会、銃があふれる環境から子どもたちを守るための「おもちゃの銃にNO!キャンペーン」、政府とタリバンとの初めての休戦の際に、地域の青年たちとともに行った、休戦延長をめざした地域での両者の話し合いの実現など、できることを積み重ねてきました。

◆ 「アフガニスタン・ピースアクション!」の活動へ

こうしたサビルラさん個人の実践を広げようとして始まったのが、現在行っている「アフガニスタン・ピースアクション!」の活動です。人びと自らが身近な争いごとの解決の事例などについて学び合う活動では、土地などをめぐる争い、発砲・死傷事件、家庭内暴力など、生々しい事件も語られています。そこでどのように非暴力で問題を解決するのかといった話し合いもなされています。そしてこうした学び合いも踏まえ、人びと自身が考えるところの平和をつくるためのアクションが実施されます。これまでに行われたのは、諸勢力が入り乱れる戦闘地で、住民たちにも様々な考え方がある中、1つになって行うスポーツイベントや、植樹の後に平和公園をつくっていく活動、復讐や暴力の連鎖も存在する中、諸勢力の戦闘員や一般市民の父親を亡くした子どもたちに寄り添い、平和の学びや精神的苦痛の緩和を行う活動、争い解決などに関する本を読んで議論する活動などです。
以前は過激な思想を持つ人間の一人だったが、活動を通して変わったと語る人もいましたし、地域の人びとが一緒になって行う活動を通して、争っていたグループが争いを解決したといった事例も出てきていました。スポーツイベントの一つは、近くで戦闘の爆発音や銃声が聞こえる中、多くの人が集まって行われました。活動関係者の一人は「人々がどれだけ平和を欲しているかが分かる」と話しています。戦闘当事者は身近におり、戦闘地近くでも行われたアクションは、人びとの平和へのパワフルなメッセージとして、伝わるはずです。

「制圧」の日。その後に続く出来事…

そうした中でのことでした…8月15日、その日、朝起きると世界が変わっていました。タリバンが戦わずして活動地の拠点都市ジャララバードを制圧したのだといいます。その後、首都カブールも含む、アフガニスタンのほぼ全土がタリバンの支配下に入りました。
8月18日。ある現地の人と話しているときに銃撃が近くで起こっているようだとのこと。その後、音が大きくなったようで、話を中断しました。この日は、アフガニスタンの独立記念日の前日で、新たに掲げられたタリバンの旗に抗議し、それまでの国旗を掲げようとする人びとがおり、デモにも発展、それに対してタリバンが発砲、死傷者が出たと、後に報道で知りました。タリバンへの抗議デモは首都カブールも含め、ジャララバード以外の地域でも起こっています。
話を中断していた現地の人からは、話せる状況になったようで、しばらくして、連絡がありました。その人は、この銃撃とはまた別の事件のことを話し始めました。ある事件で、小さな子どもが巻き添えと思われる銃撃で亡くなったのだといいます。
その人の姿を映していたカメラがふっとそれました…しばらく声も止まり、カメラは人が写らない部屋の片隅を映し出しています。その人は感情をこらえられずに、泣いていました。

◆ 懸念される危機。平和のために求められること

冒頭でもお伝えしたように、戦っていたもの同士が同じ社会に暮らしていくようになる中、復讐の事例が報告されており、さらなる暴力の連鎖も懸念されます。
カブール空港では180名以上の方が犠牲になる爆発事件が起こり、「IS」を名乗る勢力による犯行声明も出されています。依然、様ざまな武装勢力が存在しているのです。それに対する米国の攻撃も行われ、市民も犠牲になっています。米国は「誤爆」を認めています。
「IS」を名乗る勢力がタリバンを狙ったと思われる攻撃も起こり、市民も犠牲になっています。暴力の連鎖が懸念されます。
反タリバン勢力が結集している地域とは、対話による解決がなされず、激しい戦闘となりました。また、タリバンは包括的な政権をめざすと表明していましたが、当初発表の暫定政権メンバーはタリバンのメンバーで占められていました。人びとを代表する政府の樹立ができないようであれば、混乱は避けられません。
人びとによるタリバンへの抗議デモでは、発砲なども起こり、死傷者も出ています。人びとの自由な表現、全ての人びとの人権が保障されることがなければ、こうした抗議は、むしろ拡大し、緊迫した事態になりかねません。
様々な問題の解決を、戦闘や暴力で行えば、その連鎖の繰り返しです。対話によって解決していく必要があります。

◆ 今、求められる平和への行動、そして希望

戦闘が急速に拡大・激化し、タリバンが急速に勢力を増していたころ、戦闘や戦闘の犠牲・被害に強く反発する市民の声がSNSなどであがっている、それが戦闘主体には届いており、戦闘を一定程度止めている、という状況を聞いていました。アフガニスタンでも市民が声を上げ、社会を変えることができるようになっているのだと、驚くとともに前向きな気持ちになりました。また上述のように、私たちの活動の中で変わっていた人たちや争いが解決された事例もあり、私たちの活動が、戦闘に反発する市民の声や戦闘への歯止めにも貢献している、という気持ちもありました。
その後、アフガニスタンは急変したものの、市民によって様ざまな事項に関する抗議活動が行われています。もちろん「市民社会」も多様で、この声だけが人びとの声ではないですし、様ざまな声があってしかるべきです。しかし、大事なことは、社会が「力」ではない方法で問題を解決しようとしている、少なくともそうしようとしている人たちがいるということではないでしょうか。
急変を経て、様ざまな危機が存在している中、今ほど、平和への行動が、そして、これまで実施してきた「ピースアクション」が求められているときはないと思います。力ではない手段で問題を解決するように、人が、社会が変わっていく。そこに平和への希望があります。

以上

※上から
①人びとが一つになり、植樹をし、「平和公園」をつくっていく活動
②復讐や暴力の連鎖も存在する中、戦闘で父親を失った子どもたちに寄り添う
③女性たち‐身近にある争いの解決などを学び合う活動
④真剣なまなざし‐身近にある争いの解決などを学び合う活動

一般社団法人平和村ユナイテッド
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